マスメディアにおける「差別表現」について

 

1、「差別表現」・「差別語」とは

「差別表現」と一口に言ってもその定義の仕方は様々であるが、ここでは大きく二つに分けて「差別表現」をとらえておくことにする。

  1. 歴史的・語源的にその言葉自体が差別的意味をもつもの。
  2. 例)身分差別に関する差別表現など

  3. その言葉を使用する事で、特定の人が不快に感じたり、不利益を被るもの。

例)身体的差異に関する差別表現など

しかしながら、どの言葉が差別表現であり、どの言葉が差別表現ではないのか、という基準はない。よって、とらえる人それぞれの考え方、判断で差別表現が決定されると言っても良いかもしれない。

 

 

2、言論界における「差別表現」・「差別語」問題

「差別表現」・「差別語」に関する問題は年代、そして年以降にそのピークをむかえている。

 

年代 八鹿高校事件・東京都の同和行政問題などが契機となる

部落解放同盟←──対立──→共産党全国部落解放運動連合会

「差別語」であると抗議 「言葉狩り」であると反撃

精神科の医師連合、女性解放運動などの間から、部落問題に加え、身体・

精神障害者や女性に対する差別表現問題について問題が提起された。

 

筒井康隆断筆宣言

角川書店発行の高校教科書『国語T』に掲載されていた筒井康隆氏の小説

「無人警察」の中の「てんかん」表現に対して「日本てんかん協会」から

の抗議があった。この抗議に関連し、筒井氏は自己規制するマスコミへの

批判を込めて「プッツンします」と断筆宣言し、再び差別表現論議を高め

た。

 

以上、ピークの次期のみを取り上げたが、「差別表現」に関する問題は断続的に発生し続けてきたし、今現在でも続いているのが現状である。

3、「差別表現」・「差別語」問題の事例

これまでには、様々な「差別表現」の問題が起こってきた。ここでは具体的な事例をあげて、いくつか代表的なものを紹介する。

 

〇島崎藤村『破戒』……「穢多」「新平民」その他多数の同様の表現

絶版、改訂を経て初版本復元(巻末に被差別部落問題の解説)

〇司馬遼太郎『竜馬がゆく』……「ちょうりんぼう」

司馬氏が反省文を発表し謝罪

〇「三時のあなた」玉置宏発言……「芸能界は特殊部落」

〇多数政治家……「国会は特殊部落」

〇『楽しい子ども会のゲーム集』……目黒区や千葉県の社会教育主事らが執筆

替え歌遊びの個所で「お猿のかご屋」の歌詞のう

ち「エッサエッサエッサホイサッサ」部分の「サ」

を「タ」に言い換えて歌おう、と書かれていた

〇『週刊少年チャンピオン』……月「覚悟のススメ」で「鬼」というセリフ

とともに描かれた親指を折った手のシーンが本指に

修正

〇アシックス社広告……「歩くから、人間」のキャッチコピー

〇障害物競走……「野を越え山越え」「混合レース」などに名称変更

〇ゲーム機注意書……任天堂「てんかん」表現を「一時的に筋肉のけいれんや、意識の

喪失などの症状」という表現に変更

〇『ピノキオ』……「びっこのきつね」「めくらのねこ」など

〇インスタントラーメン広告……「私つくる人、ぼく食べる人」取り止めに

〇「バカチョンカメラ」「支那そば」等の表現

〇『ちびくろサンボ』……年から年にかけて、社から刊行されていた種類

すべてが廃刊

〇だっこちゃん人形・カルピスのマーク……年、年にかけて、ともに製造中止

、使用禁止

〇「トルコ風呂」……「ソープランド」に名称変更

 

 

4、「差別表現」・「差別語」のとらえ方

「差別表現」・「差別語」に対する考え方、とらえ方は、その定義と同様に人それぞれだが大きくつの立場に分ける事ができる。

@「差別表現」・「差別語」に対し抗議し、糾弾していこうとする立場

部落解放同盟や障害者団体など

ある表現によって、非常に傷ついたり、不利益を被る人が存在するという事実があ

るかぎり抗議しない訳にはいかない、というのがその主張。

差別的な表現であっても文脈上、または作品全体として差別を助長するものではな

いと判断できるものは抗議はしない方針。

  1. 言論の自由・表現の自由の擁護を主張する立場
  2. 作家・制作者など

    言葉や表現そのものを大事にする感覚。

  3. 自主規制をとる立場

マスメディア(出版社・放送局など)

  1. 言い換え集、放送禁止用語集などによる事前修正
  2. 謝罪、訂正による事後処理

「触らぬ神にたたりなし」的な方法で機械的に「差別表現」を避けたり、問題が起きた時には誤って丸くおさめようとしたり、本質的に差別と向き合っていないとの批判が集まっている。

都合上(比較しやすいため)つに分けたが、現在では互いの交流、意見交換、議論により新たな方向性というものも見えてきている。

 

 

5、現状における問題点・今後の展開

今回の学習会では、この当たりの事について議論できればと思っていますので、省略です。

 

 

6、最後に

「差別表現」・「差別語」問題はなぜ起きるのか?

表現・言葉が表面に出て問題化される事が多いが、表現・言葉自体は実体を持つものなのか?

「差別表現」・「差別語」の実体はどこにあるのか?